不正防止の仕組みを構築すべし
不正をさせてしまった経営者にも責任が
給料の低迷を反映してか、従業員等による社内不正が増加しているような感じがします。上場企業の2009年のアンケート結果ですが、過去3年以内に不正が発生した企業は約2割となっていて、その類型は窃盗などの「資産横領」が最も多く、次が「不正財務報告」、「売上入金」となっています。
不正の手口は近年多様化していますが、現実に中小企業で今起きている不正の多くは、「入社時はどこにでもいる普通の従業員」が、「非常に稚拙なすぐばれるような手口」で、「非常に安易に行われている」のが実態です。
これは、経営者が果たすべき社内不正を防止するための努力を放棄してしまっているからではないかとも思います。どんな人間でも弱い心を持つ時というのがありますが、その時に不正をしてもバレにくい組織や不正を許容する雰囲気が会社にあると、悪事に手を染めてしまう人間が発生してしまいます。
不正を防止するための仕組み作り
普通の人間を犯罪者に変身させてしまわないために、経営者にはぜひ不正を防止するための仕組み作りに力を注いでもらいたいです。
不正の手口としてよくあるのが、「帳簿や領収書、請求書などの改ざん」によるものです。これを防止するためには、「実際の現預金取扱者と伝票や帳簿への記入者を分ける二人チェック体制」や「定期的な経営者への書類回覧」、「突然の経営者の現物チェック」、「書類へのボールペン書きの徹底」などがあります。
「売上の横領」という不正に対しては、「現金取引をやめる」、「売上先への残高確認書の郵送」や「在庫の実地調査」などがあります。
また、不正全般に対して有効な対策としては、「JOBローテーションの実施」、「過大なノルマの中止」や「経営者の意識改革」などがあります。特に経営者の意識改革としては、「面倒くさいがために任せっきりにしてチェックしないことを、従業員への信頼だと勘違いしないこと」が重要かと思います。大切な従業員を不正が容易にできてしまうようなかわいそうな職場で働かせることのないように、経営者としての不正を防止するための努力義務をきちんと果たしましょう。
2012.12.1執筆
(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。
今村 仁
「節税は義務、納税は権利」がモットーです。
自分の半生について、取材を受けました。